原始関数
関数 \(f(x)\) において,\(F'(x)=f(x)\) を満たす関数 \(F(x)\) を \(f(x)\) の 原始関数 という。
高校では,原始関数と不定積分は同意語として扱われてるが,専門書などでは区別されているものも少なくない。
大学で使用されるテキストでは,逆三角関数や逆双曲線関数の導関数が公式になっている。
\begin{align}
&\cosh^{ -1 } x = \log ( x + \sqrt{ x^2 - 1 } ) \hspace{30px} &\sinh^{ -1 } x &= \log ( x + \sqrt{ x^2 + 1 } ) \nonumber \\
&\tanh^{ -1 } x = \frac{1}{2} \log \frac{ 1+x }{ 1-x } ( x^2 \lt 1 ) \hspace{30px} &\coth^{ -1 } x &= \frac{1}{2} \log \frac{ x+1 }{ x-1 } ( x^2 \gt 1 ) \nonumber \\
\end{align}
であるから,
\begin{align}
&\frac{d}{dx} \cosh^{ -1 } x = \frac{1}{ \sqrt{ x^2 - 1 } } \hspace{30px} &\frac{d}{dx} \sinh^{ -1 } x &= \frac{1}{ \sqrt{ x^2 + 1 } } \nonumber \\
&\frac{d}{dx} \tanh^{ -1 } x = \frac{ 1 }{ 1-x^2 } ( x^2 \lt 1 ) \hspace{30px} &\frac{d}{dx} \coth^{ -1 } x &= \frac{ 1 }{ 1-x^2 } ( x^2 \gt 1 ) \nonumber \\
\end{align}
である。
また,
\begin{align}
&\frac{d}{dx} \cos^{ -1 } x = - \frac{1}{ \sqrt{ 1 - x^2 } } \hspace{30px} &\frac{d}{dx} \sin^{ -1 } x &= \frac{ 1 }{ \sqrt{ 1 - x^2 } } \nonumber \\
&\frac{d}{dx} \tan^{ -1 } x = \frac{ 1 }{ 1 + x^2 } \hspace{30px} &\frac{d}{dx} \cot^{ -1 } x &= - \frac{ 1 }{ 1+x^2 } \nonumber \\
\end{align}
である。
この結果から
\begin{align}
&\int \frac{ dx }{ \sqrt{ x^2 - 1 } } = \cosh^{ -1 } x = \log ( x + \sqrt{ x^2 - 1 } )
\hspace{30px}
&\int \frac{ dx }{ \sqrt{ x^2 + 1 } } &= \sinh^{ -1 } x = \log ( x + \sqrt{ x^2 + 1 } ) \label{a} \\
&\int \frac{ dx }{ 1-x^2 } = \tanh^{ -1 } x = \frac{1}{2} \log \frac{ 1+x }{ 1-x } ( x^2 \lt 1 )
\hspace{30px}
&\int \frac{ dx }{ 1-x^2 } &= \coth^{ -1 } x = \frac{1}{2} \log \frac{ x+1 }{ x-1 } ( x^2 \gt 1 ) \label{b} \\
\end{align}
であり,2つの積分 \eqref{b} をまとめると
\begin{align}
\int \frac{ dx }{ 1-x^2 } = \coth^{ -1 } x = \frac{1}{2} \log \left| \frac{ x+1 }{ x-1 } \right| \label{c} \\
\end{align}
となる。いずれも積分定数は省略。
また,逆三角関数の微分から,
\begin{align}
&\int \frac{ dx }{ \sqrt{ 1 - x^2 } } = \sin^{ -1 } x
\hspace{30px}
&\int &\frac{ dx }{ 1 + x^2 } = \tan^{ -1 } x \label{d} \\
\end{align}
である。
これらの公式 \eqref{a} ~ \eqref{d} は,高校では公式として扱われず解く問題として扱われる。
公式 \eqref{a} の第2式の求め方について,紹介しよう。
高校で使われる問題集や参考書では,\( x=\tan \theta \) や \( t = x + \sqrt{ x^2 + 1 } \) と置換して求めるように誘導されている。
例えば,\( t = x + \sqrt{ x^2 + 1 } \) と置換すると,\( t - x = \sqrt{ x^2 + 1 } \) より両辺を2乗して
\begin{eqnarray}
(t - x)^2 &=& x^2 + 1 \notag \\
t^2 - 2tx +x^2 &=& x^2 + 1 \notag \\
2tx &=& t^2 - 1 \notag \\
x &=& \frac{ t^2 - 1 }{ 2t } \label{e} \\
\end{eqnarray}
と表される。
\begin{eqnarray}
\sqrt{ x^2 + 1} &=& t - x \notag \\
&=& t - \frac{ t^2 - 1 }{ 2t } \notag \\
&=& \frac{ t^2 + 1 }{ 2t } \label{f} \\
\end{eqnarray}
\eqref{e} より,
\begin{eqnarray}
\frac{ dx }{ dt } &=& \frac{ 2t・2t - (t^2-1)・2 }{ (2t)^2 } \notag \\
&=& \frac{ 2t^2 - (t^2-1) }{ 2t^2 } \notag \\
&=& \frac{ t^2 +1 }{ 2t^2 } \label{g} \\
\end{eqnarray}
\eqref{f},\eqref{g} から,
\begin{eqnarray}
\int \frac{ dx }{ \sqrt{ x^2 + 1 } } &=& \int \frac{ 2t }{ t^2 + 1 } \frac{ t^2 +1 }{ 2t^2 } dt \notag \\
&=& \int \frac{ 1 }{ t } dt \notag \\
&=& \log|t| \notag \\
&=& \log \left| x + \sqrt{ x^2 + 1 } \right| \label{h} \\
\end{eqnarray}
10年ほど前に研究大会に参加した時のこと。
講演の内容がほとんど知っている話だったが,1つだけ初めて聞くことでとても興味深かった。
それがこの積分の解法だった。
上記の置き方でなく,\( y = \sqrt{ x^2 + 1 } \) と置換しての解法だった。
こんな方法があるのか... と驚いたことをよく覚えている。
\( y = \sqrt{ x^2 + 1 } \) より,\( y^2 = x^2 + 1 \) だから,
両辺を微分して \( 2ydy = 2xdx \)
よって,\( \frac{ dy }{ x } = \frac{ dx }{ y } \)
加比の理により
\begin{eqnarray}
\frac{ dx }{ y } &=& \frac{ dy + dx }{ x + y }
&=& \frac{ d(x + y) }{ x + y } \label{i} \\
\end{eqnarray}
\eqref{i} から,
\begin{eqnarray}
\int \frac{ dx }{ y } &=& \int \frac{ d(x + y) }{ x + y }
&=& \log|x+y|
&=& \log \left|x+\sqrt{ x^2 + 1 } \right| \label{j} \\
\end{eqnarray}
以上
いろいろな解法があるものだなぁ~と感心した。
他にもかわった解法があれば,紹介したい。